連日、マイナンバーカードの自主返納が話題ですね。
発端は、
- 健康保険証化したマイナンバーカードを医療機関で使ったら資格がなく、別の人の健康保険証と紐づいていた
- コンビニ交付で、住民票をコンビニエンスストアで出力したら他の人の住民票が出てきた
などでしょう。
健康保険証は、支援窓口大混雑でマイナポータルを一度ログインしたまま、別の人の登録支援したり、組合などがデスマーチで保険情報を手入力させられたりの人的ミス。
コンビニ交付は、マイナンバーカードが使われだされ、ようやくあぶり出されたシステムのバグ。
分かっている人は分かってますが、そんな人はマイノリティで、不安に思う人がほとんどでしょう。
マイナンバーカードの返納を考えたり、実際に返納したりする人が多いのも納得です。
- マイナンバーカードを返納するとどうなる?
- メリット・デメリットは?
- 返納のやり方は?
こんなお悩みにお答えします。
本記事をご覧の方は
という方が多いのではないでしょうか。
本記事では、マイナンバーカードの返納したらどうなるのか、メリット・デメリットをお伝えします。
本記事ではマイナンバーカードの返納を、推奨も抑制もしていないつもりですが、ぬくぬく自身はマイナンバーカードを活用しているので、抑制寄りの内容になっていると思います。
10分くらいで、マイナンバーカードを返納したときのメリット・デメリットと、今後どうなっていくかがイメージできると思いますので、ご一読いただけますと幸いです。
マイナンバーカードを返納すると解放されること(3つのメリット)
マイナンバーカードを返納すると受けられるメリットは次のとおり。
メリット①:紛失や盗難のリスクが無くなる
マイナンバーカードを返納して得られるメリット1つ目は、昨今重要度の増したマイナンバーカードを失くしてしまう不安や、盗難に合うリスクが無くなることです。
もう随分過去の話ですが、マイナンバーカードを作った当初は、マイナンバーを隠すための透明のフィルムケースに入れられて「持ち歩くな!」「マイナンバーは誰にも見せるな!!」と言われていたと思います。
今は「積極的に使え!」「マイナンバーは見せても個人情報は見られない!」と反転。
当然、誰しも不安に思うでしょう。
マイナンバーカードを返納すれば、そういった不安や心配は無くなるでしょう。
メリット②:個人情報漏洩のリスクが少し減る
マイナンバーカードを返納して得られるメリット2つ目は、マイナンバーカードの物理カードを紛失・盗難されて悪用されるという、個人情報漏洩のリスクが減ることです。
もし財布や手帳型のスマホケースに、マイナンバーカード入れていて落としたらという不安とはおさらばできますし、もし失くしたときに、わざわざマイナンバー総合フリーダイヤルに電話して、停止しなければならないという手間も考えなくてよくなります。
マイナンバー総合フリーダイヤル:
0120-95-0178(音声ガイダンス2番をお選びください。)
https://www.kojinbango-card.go.jp/security/
だだし、注意点があります。
マイナンバー関する情報(=特定個人情報)の漏洩リスクはあまり変わりません。
現在、自治体や企業などでは、特定個人情報(マイナンバーを含むデータ)が漏洩・紛失・毀損したときなどには、必ず「個人情報保護委員会」へ報告する義務があります。
個人情報保護委員会の年次報告によると、以下の件数が漏洩しています。
件数や人数を見ると驚くかもしれませんが、この中には、地方公共団体の委託先ベンダーの再委託先で、特定個人情報を取り扱う許可を、地方公共団体へ得ずに利用していた(第三者委託)なども含まれています。
(もちろん、USBメモリ紛失などヤバめの事案もあります。)
こういった個人情報漏洩のリスクにおびえなくて済むと勘違いしてませんか?
残念ながら、マイナンバーカードを返納しても、マイナンバーは付番されたままです。
例え、今までにマイナンバーカードを作ったことが無くても、日本に生まれたら、出生届を出した時点でマイナンバーが付番されます。
したがって、マイナンバーカードを返納しても、マイナンバーが付番されている以上、特定個人情報が漏洩したら、返納したあなたのデータも漏洩している可能性があります。
マイナンバーカードを返納して減らせるリスクは、「物理カード」を使った悪用や、今回発生している人的ミス・システムのバグが原因であるもの、ということを認識しておきましょう。
メリット③:カードおよび電子証明書の更新の手間が無くなる
マイナンバーカードを返納して得られるメリット3つ目は、マイナンバーカードと電子証明書の更新の手間がなくなることです。
マイナンバーカード(物理カード)は10年ごとに、マイナンバーカード内臓のICチップに格納されている電子証明書は5年ごとに更新手続きが必要です。
特に10年ごとに更新する物理カードは、申請に顔写真が必要になります。準備するの、面倒ですよねぇ…身分証明書としての役割を考えれば、当然ですが。
マイナンバーカードを返納してしまえば、更新手続きも不要になります。
参考リンクマイナンバーカードの電子証明書を更新してみた!手続き方法10ステップ
マイナンバーカードを返納する7つのデメリット
マイナンバーカードを返納するデメリットは次のとおり。
デメリット①:料金や手数料が高くなる
マイナンバーカードを返納するデメリット1つ目は、医療費や、住民票の発行手数料が高くなります。
病院を受診するとき、健康保険証(2025年秋からは資格確認書)で受付した場合は、健康保険証化したマイナンバーカードで受付した場合よりも高くなります。
参考リンク2022年10月、2023年4月からマイナ健康保険証の窓口負担が変わる
また、マイナンバーカードが無いと、コンビニ交付を利用して住民票や印鑑証明書、戸籍などを発行できないため、市区町村役場での発行手数料が高くなります。
現在は、あまり大きなデメリットに見えないでしょう。
しかし、マイナンバーカードを利用した公的個人認証サービスは、今後民間でも猛威を振るうことが予測されます。
民間では、DXにより効率化したことで、オンライン手続きでは手数料無しだけど、店頭窓口で紙による手続きだと手数料が必要になる、などの差別化が起きたのと同じような事象が、マイナンバーカードでも起きるかもしれません。
既に、PayPay銀行などでは、マイナンバーカードさえあれば、本人確認して最短当日利用開始できるサービスが展開されるなど、差別化の片鱗は見えてきています。
今後、費用負担的な意味でマイナンバーカード保有者優遇(非保有者冷遇)措置が増えていくでしょう。
デメリット②:手続きに「手間」がかかる
マイナンバーカードを返納するデメリット2つ目は、手続きが紙ベースになるので、手間がかかることです。
一番分かりやすいのは、平日に有給を取って市区町村へ出向いて手続きする系ですね。
例えば、マイナンバーカードがあれば、転出届の提出はマイナポータルから可能。なければ、転出元市区町村窓口で転出届を貰って手書きし、提出。
しかも手書きだと「この項目、何を書くの?」となったりします。オンラインなら入力する内容が例として初期表示されていたりしますので、迷うこともあまりないでしょう。
他にも下表のとおり、オンラインなどで済ませられることが、できなくなります。
事象 | マイナンバーカード無し | マイナンバーカードあり |
---|---|---|
住民票や戸籍など | 市区町村窓口で手続き | コンビニ交付 |
転出届などの申請 | 市区町村窓口で申請 | マイナポータル |
確定申告 (一部付帯書類) | 税務署 または郵送 | 確定申告書等作成コーナー (マイナンバーカード方式) |
パスポートの更新 | パスポートセンター | マイナポータル |
給付金などの公金受取 | 市区町村窓口で申請 または郵送 | マイナポータルの公金受取口座指定 (自動支給) |
年金手続き | 年金事務所 | マイナポータル |
医療機関受付 | 保険証 診察券 医療費助成受給者証 を提出 | マイナンバーカード搭載スマホで受付 |
障がい者割引 | 障害者手帳を提示 | マイナンバーカード搭載スマホを読み取る |
引越しワンストップ (今後拡大予定) | 転入届とは別に 電気ガス水道など別々に手続き 各サービスの住所変更も個別に実施 | 転入届提出と合わせて 電気ガス水道自動開始など 各サービスの住所も自動変更 |
介護ワンストップ (今後拡大予定) | 市区町村窓口や 包括支援センターへ相談 | 介護認定をマイナポータルから申請 マイナンバーカードの介護保険証化も |
死亡・相続ワンストップ (今後拡大予定) | 死亡届提出と別に 電気ガス水道など別々に名義変更 | 死亡届提出と合わせて 各サービスの名義を自動変更 推定相続人への通知機能も予定。 |
遺言書 | 法務局で申請 | デジタル遺言書 |
今後も紙からマイナンバーカードを利用は拡大していくでしょう。
参考リンク知る人ぞ知る!マイナンバーカードのロードマップ26選!!
マイナンバーカードを返納してしまうと、マイナンバーカードに搭載されているICチップの電子証明書を利用できなくなります。
したがって、オンラインでサービスを利用できなくなり、紙ベースでのやりとりを行うことになるため、手間がかかるでしょう。
デメリット③:手続きに「時間」がかかる
マイナンバーカードを返納するデメリット3つ目は、手続きが紙ベースになるので、時間がかかることです。
例えば、助成金や給付金などを申請するとき、オンラインで申請可能ならば、24時間365日好きなタイミングで申請でき、給付もすぐになされるものもあるでしょう。
しかし、マイナンバーカードを変更していた場合、会社に有給休暇を申請する時間、市区町村役場への往来の時間、窓口での待ち時間、紙に書く時間など、無駄が多くなります。
私も痛感したところで、確定申告をオンラインで申請すると最短2週間で還付金が振り込まれるところ、紙だと数か月かかりました。
マイナンバーカードを返納すると、「申請にかかる時間」も「サービスを受けられるまでの時間」も無駄が多くなることを覚悟しておきましょう。
デメリット④:代替となる身分証明書の選定が必要
マイナンバーカードを返納するデメリット4つ目は、マイナンバーカードに代わる身分証明書の準備が必要になることです。
マイナンバーカードを返納したら、「運転免許証」など、なにを「あなたの身分証明書とするか」を決めておきましょう。
ちなみに、健康保険証は、既に身分証明書としての役割は終えましたので、保険証以外で決めましょう。
例えば、以下のとおり、身分証明書として使える本人確認書類の強さ、ティア表は、以下のとおり。
Tier | 書類 | 公的手続き | スマホ | 賃貸 | 口座 | クレカ |
---|---|---|---|---|---|---|
ランクSSR | マイナンバーカード | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ランクSSR | 運転免許証 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ランクSSR | 障害者手帳 (身体・精神) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ランクSR | 在留カード | ◯ | △ | ◯ | ◯ | ◯ |
ランクSR | 特別永住者証明書 | ◯ | △ | ◯ | ◯ | ◯ |
ランクR | パスポート | ◯ | △ | ◯ | ◯ | △ |
ランクN | 健康保険証 | △ | × | ◯ | △ | × |
運転免許証は、高齢になると返納の可能性が高まる点に注意を!
マイナンバーカードを返納してしまう前に、身分証明書として、今後どれを利用していくかを必ず考えておきましょう!
デメリット⑤: 結局、マイナンバーは覚えておく必要あり
マイナンバーカードを返納するデメリット5つ目は、マイナンバーは引き続き、各種申請などで必要になるので、覚えるか控えておく必要があることです。
例えば、投資するにあたって、証券会社でNISA口座を開設しようとしたとき、マイナンバーは必須です。
したがって、マイナンバーカードを返納したとしても、住民票(個人番号記載あり)を取得すれば、マイナンバーが記載されているので、必ず発行して控えておきましょう!
なお、マイナンバーは、マイナンバーカードを返納した前でも、後でも変わりませんので、住民票(個人番号あり)の取得タイミングはいつでもOKです。
デメリット⑥:再発行で手数料1,000円。マイナンバー変わらず
マイナンバーカードを返納するデメリット6つ目は、もしマイナンバーカードを再発行したいとなった場合、手数料1,000円かかることです。
なお、マイナンバーは、マイナンバーカード返納前と同じ番号です。
デメリット⑦:スマホに搭載したマイナンバーカードは無効に
マイナンバーカードを返納するデメリット7つ目は、スマホに搭載したマイナンバーカード機能(電子証明書のスマホ搭載)は、返納したタイミングで失効することです。
マイナンバーカード(物理カード)は返納したけど、スマホに搭載したマイナンバーカードは使い続ける、なんてことはできません。
参考リンクマイナンバーカード機能のスマホ搭載のメリット5つ・デメリット3つを解説!
マイナンバーカードを返納しても変わらない4つのこと
マイナンバーカードを返納しても変わらないことは次のとおり。
返納後変化無し①:マイナンバーは付番されたまま
マイナンバーカードを返納しても変わらないこと1つ目は、マイナンバーは付番されたままであることです。
自治体システムや民間サービスに登録されたマイナンバーは削除されませんので、個人情報漏洩や悪用などのセキュリティリスクはあまり変わりません。
返納後変化無し②:健康保険証の紐づけは解除されない
マイナンバーカードを返納しても変わらないこと2つ目は、健康保険証利用を1度でも登録したら、紐づけは解除されません。
残念ながら、健康保険証利用を登録したら、悪用の恐れがあるなどの事象が無い限り、紐づけ解除できません。
返納後変化無し③:貰ったマイナポイントは返却不要
マイナンバーカードを返納しても変わらないこと3つ目は、既に貰ってしまったマイナポイントは返却不要です。
マイナポイントを貰ってしまったから、返納できない、なんてことはありません。
返納後変化無し④:マイナンバーカードを使って登録したサービス
マイナンバーカードを返納しても変わらないこと4つ目は、マイナンバーカードを使って利用開始した民間サービスは、継続で利用可能です。
ただし、サービスによって異なる可能性がありますので、重要と思うサービスは、サービス提供者へ事前に確認しておきましょう!
マイナンバーカードの返納方法5ステップ
マイナンバーカードを返納するやり方は次の5ステップで可能です。
ステップ①:公金受取口座の設定を解除
マイナンバーカード返納ステップ①では、マイナポータルログイン>[メニュー]ボタンをタップ>[口座情報の登録・変更]をタップして、[口座情報を削除する]リンクをタップします。
ステップ②:マイナポータルの利用者情報を削除
マイナンバーカード返納ステップ②では、マイナポータルログイン>[ログイン中]ボタンをタップ>[アカウント設定(利用者登録変更)]をタップして、[利用者登録を削除する場合はこちら]リンクをタップします。
ステップ③:必要書類を準備
マイナンバーカード返納ステップ③では、返納に必要な本人確認書類を準備します。
マイナンバーカード以外の本人確認書類を準備しましょう。
ステップ④:市区町村役場へ出向く
マイナンバーカード返納ステップ④では、市区町村役場や市民センターなどへ行って、窓口で「マイナンバーカードを返納したい」旨を伝えましょう。
マイナンバーカード返納届を渡されます。
ステップ⑤:返納届に理由などを記入し提出
マイナンバーカード返納ステップ⑤では、マイナンバーカード返納届に必要事項を記入します。
「返納理由」項目には、本人希望や、「セキュリティ面に不安があるため」など、正直な内容を記入しましょう。
「電子証明書のシリアル番号」は「スマホ電子証明書が有効か(有効期限)を確認したいとき」にある証明書情報の確認の「詳細情報」タブに「シリアル番号」項目がありますので、その内容を記載します。
記入して提出すると「電子証明書失効通知書」が貰えます(マイナンバーカードの電子証明書が無効になった証明書)。
マイナンバーカードの返納手続きは以上です。
さいごに:マイナンバーカードの返納は慎重に
マイナンバーカードの返納について、メリット・デメリットを上げてきました。
マイナンバーカードを返納するか否かの判断材料のひとつとして利用いただけたら幸いです。
なお、私はマイナンバーカードの返納について、特に何も思っていません。
私個人としてはリスクを承知(なんなら漏洩は絶対防げないと思ってます)で利用しますが、返納する人が多いのも当たり前と思っています。
今回、もし返納したら、どういう未来が待っているのか気になり、記事にしてみたので、本記事を読んで「返納したい!」と思って返納するのもOKです。
それがあなたの人生における選択なので、私に止める権利は何一つありません。
しかし、民間サービスを利用する際も、オンラインで契約・解約できないサービスはいざというときに効率が悪いので、すべて切り捨ててきた私としては、正直、マイナンバーカードがない未来が予想できません。
漏洩のリスクより、無駄に時間のかかる手続きがオンラインで解消できないの方がストレス。
さらには、お酒やたばこもマイナンバーカードで年齢確認して購入する時代です。
今後もマイナンバーカード利活用が広まっていくことでしょう。
上記を踏まえて、あなたにとって、最良の選択ができますよう。
マイナンバーカードに関する記事一覧
マイナンバーカードに関する記事は「マイナンバー記事まとめ」にまとめていますので是非ご覧ください。
以上、ご参考になれば幸いです。