財産の相続方法が決まった後に、4か月以内に行う手続きは
- 準確定申告
です。
税務署へ亡くなられた方の所得税の申告を行います。
ここでは、
- 準確定申告をいつまでに申告しなければならないのか
- 準確定申告をしないとどうなるのか
- 準確定申告が必要かどうか
- 準確定申告の電子申告は2020年分からe-Taxソフトで可能
- 準確定申告を税理士へ依頼する場合の費用は?
- 準確定申告の還付はいつ頃振り込まれる?
についてお伝えしていきます。
【死亡後の対応】4か月以内に行う準確定申告の期限や注意事項について
1.準確定申告の期限
準確定申告は、
「相続の開始があったことを知った日の翌日」から4か月以内
に申告と納税が必要です。
2.準確定申告をしないとどうなる?
面倒くさいのはわかります。
準確定申告しなくていいやー、なんて申告期限の4か月を過ぎて放り投げておくと
「加算税」「延滞税」「刑罰」の可能性があります。
①.加算税
本来納付すべき税額に加えて追加で税金が課せられます。
加算税は4種類あって、本来納付すべき税額に税率を乗算した税金を追加で支払います。
No | 加算税の種類 | 納付すべき税額に乗算する税率 | 根拠法:国税通則法 |
---|---|---|---|
1 | 無申告加算税 | 15%または20% | 第六十五条 (過少申告加算税) |
2 | 過少申告加算税 | 10%または15% | 第六十六条 (無申告加算税) |
3 | 不納付加算税 | 10% | 第六十七条 (不納付加算税) |
4 | 重加算税 | 35%、40%、45%、50% | 第六十八条 (重加算税) |
- 無申告加算税:納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額
- 過少申告加算税:新たに納付すべき税額の10%。新たに納付すべき税額が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%
- 不納付加算税:納付すべき税額に対して、10%
- 重加算税:納付すべき税額に対して、35%~50%
②.延滞税
延滞税は、納付期限の翌日から納付の日まで課せられます。
2 延滞税の割合
国税庁「No.9205 延滞税について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
法定納期限(注1)の翌日から納付する日までの日数に応じて次の割合により延滞税が課されます。
(1) 納期限(注2)の翌日から2月を経過する日まで、原則として年「7.3%」
(2) 納期限の翌日から2月を経過した日以後、原則として年「14.6%」
③.刑罰
以下の刑罰の可能性があります。
- 5年以下の懲役
- 500万円以下の罰金
- 上記1、2の併科(懲役と罰金の両方を適用)
本記事に来るまで調べてきた人は「準確定申告書を提出し、納付すべき所得税を納付しない場合、5年以下、500万円以下の罰金」というのは散々見てきたと思いますが、根拠が書かれていませんが、根拠は次のとおりです。
<刑罰の根拠>
所得税法第238条3項に記載されています。
所得税法(昭和四十年法律第三十三号)
施行日:令和元年七月一日
最終更新:平成三十一年三月二十九日公布(平成三十一年法律第六号)改正第六編 罰則
第二百三十八条
3 第一項に規定するもののほか、第百二十条第一項、第百二十五条第一項(年の中途で死亡した場合の確定申告)、第百二十七条第一項(年の中途で出国をする場合の確定申告)、第百五十一条の四第一項若しくは第二項(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の修正申告の特例)、第百五十一条の五第一項(遺産分割等があつた場合の期限後申告等の特例)若しくは第百五十一条の六第一項(遺産分割等があつた場合の修正申告の特例)(これらの規定を第百六十六条において準用する場合を含む。)又は第百七十二条第一項の規定による申告書をその提出期限までに提出しないことにより、第百二十条第一項第三号(第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する所得税の額(第九十五条又は第百六十五条の六の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした所得税の額)又は第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号に規定する所得税の額につき所得税を免れた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
e-Gov所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百三十八条3より
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033#2030
3.準確定申告が不要なのはどういった場合?
以下の場合は準確定申告不要です。
- 亡くなった方が会社員やアルバイトなど1か所から給与所得を得ており、源泉徴収により所得税を納めていた場合
- 亡くなった方が年金受給者で受給額が400万円以下 かつ 他の所得が20万円以下の場合
- 相続人が相続放棄をした場合
逆に言うと、その他は準確定申告が必要ということになります。
4.準確定申告の電子申告は2020年分からe-Taxソフトで可能
2020年分から、準確定申告がe-Taxソフトで電子申告できるようになりました。
<e-Taxで準確定申告を電子申告する場合の提出書類一覧>
No | 提出書類 | 提出ファイル |
---|---|---|
① | 所得税及び復興特別所得税の準確定申告書 | XML |
② | 死亡した者の令和_年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 | XML |
③ | 準確定申告の確認書 (相続人が2名以上の場合) | |
④ | 委任状 (相続人が2名以上で、還付金を代表の相続人が受け取る場合、必要になる税務署がある) | 書面(郵送) |
ただし、依然として、「確定申告書等作成コーナー」での申告はできません。
(注) 国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーから所得税及び復興特別所得税の準確定申告書の作成はできません。
国税庁 所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について :https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/jyunkaku/index.htm
と、書いてありますが、あくまで「申告」ができないだけで「準確定申告書」の作成はできます。
詳しくは「準確定申告書の書き方や必要な添付書類、提出方法は?」をご覧ください。
5.準確定申告を税理士へ依頼する場合の費用は?
5万円前後です。
相続税の申告も依頼する場合、資産の1%の費用がプラスされるので、数十万まで跳ね上がります。
6.準確定申告の還付はいつ頃振り込まれる?
1か月~1か月半程度で還付金が、準確定申告書付表に記入した口座に振り込まれます。
【まとめ】準確定申告を行うために
準確定申告は面倒だからやらないと加算税や延滞税などのリスクにも発展していきます。
今は、e-Taxで相続人がアカウントを取得して申請できますし、2019年分までは必要だった税務署へ郵送提出すべき資料も減っています。
晩年、年金収入だけで、入退院を繰り返したり、介護施設でお世話になっていた場合、おそらく医療費控除だけで還付金受取のための準確定申告になると思います。
次の記事を参考に、準確定申告は必ず実施しましょう。
準確定申告の後は「相続税の申告」が必要になるかもしれません。
【死亡後の対応】10か月以内に行う手続き(相続税の申告)の記事を参考に相続税の申告を確認しましょう。
ご家族が亡くなったときの手続きや流れは、「家族が亡くなったときの手続き&期限のチェックリスト」をご活用ください。
終活・相続に関する記事一覧は以下のリンクにまとめていますので、是非ご覧ください。
以上、ご参考になれば幸いです。