相続が発生すると「法定相続人」に相続される割合である「法定相続分」は有名です。
しかし「遺留分」についてはご存知ないのではないでしょうか?
ここでは
についてお伝えしていきます。
10分ぐらいで「法定相続分」と「遺留分」の割合が分かり、遺留分侵害額請求でいくら請求できるか分かりますので、是非ご一読ください!
法定相続分とは?
法定相続分とは、遺言書が無い相続において、相続人が遺産を取得できる割合を、民法第900条で規定したものです。
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
民法900条
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
遺留分とは?
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人は、「遺留分」として、遺産を取得する権利のことです。
(遺留分の帰属及びその割合)第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
民法1042条
遺留分侵害額請求とは?
(遺留分侵害額の請求)第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
民法1046条
「遺留分」取得の権利をもつ「兄弟・姉妹以外の相続人」は、遺言書などで遺産を相続した人(受贈者)に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる権利のことです。
もともと「遺留分“減殺”請求権」でしたが、2019.7/1の民法改正で「遺留分減殺請求権」は「遺留分侵害額請求権」に変更されました。
ただし、改正前(2019.7/1より前)に発生した相続は、改正前の「遺留分減殺請求権」制度が適用されます。
遺留分侵害額請求には「1年時効」と「10年時効」がある!
遺留分侵害額請求の時効 |
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遺留分権利者が、亡くなったことを知った日(相続の開始)から1年間 |
遺留分権利者が、遺留分を侵害する贈与 又は 遺贈があった ことを知った日から1年間 |
相続開始(亡くなった)時から10年を経過したとき |
遺留分を侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」を行うには「1年時効」と「10年時効」があります。
ただし、後述するように、相続人に対して遺留分侵害額請求を内容証明郵便(配達証明)で請求することで時効は中断されます。
遺留分侵害額請求できる遺留分の割合を相続パターン別に解説!
では実際に遺留分侵害額請求できる「遺留分」の割合をパターン別に解説いたします。
解説するパターンは全部で次の7つです。
なお、遺言書等で財産一部を相続人に遺贈された場合、
遺留分侵害額請求=「遺留分」-「遺贈された分」
となります。
パターン①:「配偶者のみ」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
両親が既に他界していて、法定相続人が配偶者のみの場合、
遺留分は1/2・法定相続分は1/1です。
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 配偶者
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 財産1000万円×1/2=500万円
パターン②:「配偶者と親」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
両親が健在で、法定相続人が「配偶者」と「両親」の場合、
- 配偶者:遺留分は1/2・法定相続分は2/3なので遺留分侵害額請求割合は2/6
- 親 :遺留分は1/2・法定相続分は1/3なので遺留分侵害額請求割合は1/6(各1/12ずつ)
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 配偶者
- 親
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 配偶者:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分2/3=333万円
- 親:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/3=166万円(各83万円)
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で
①両親へ50万円ずつ(100万円)遺贈する
②残り(800万円)を配偶者へ第三者へ遺贈する
となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 配偶者:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分2/3=333万円
- 親:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/3-100万円=66万円(各33万円)
パターン③:「親のみ」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
両親が健在で、法定相続人が「親のみ」の場合、
- 親:遺留分は1/3・法定相続分は1/1(各1/2ずつ)なので遺留分侵害額請求割合は1/3(各1/6ずつ)
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 親
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 親:財産1000万円×遺留分1/3×法定相続分1/1=333万円(各166万円)
パターン④:「配偶者と兄弟・姉妹」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
法定相続人が「配偶者」と「兄弟・姉妹」の場合、
- 配偶者:遺留分は1/2・兄弟姉妹への遺留分分配不要なので遺留分侵害額請求割合は1/2
- 兄弟/姉妹:遺留分は0(遺留分対象外)なので遺留分侵害額請求割合は0
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 配偶者のみ
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 配偶者:財産1000万円×遺留分1/2=500万円
- 兄弟/姉妹:財産1000万円×遺留分0=0万円
パターン⑤:「兄弟・姉妹のみ」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
法定相続人が「兄弟・姉妹のみ」の場合、
- 兄弟/姉妹:遺留分は0(遺留分対象外)なので遺留分侵害額請求割合は0
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- なし
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 兄弟/姉妹:財産1000万円×遺留分0=0万円
パターン⑥-1:「配偶者と子(ひとり)」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
法定相続人が「配偶者」と「子」の場合、
- 配偶者:遺留分は1/2・法定相続分は1/2なので遺留分侵害額請求割合は1/4
- 子 :遺留分は1/2・法定相続分は1/2なので遺留分侵害額請求割合は1/4
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 配偶者
- 子
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 配偶者:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/2=250万円
- 子:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/2=250万円
パターン⑥-2:「配偶者と子(複数)」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
法定相続人が「配偶者」と「子が複数」の場合、
- 配偶者:遺留分は1/2・法定相続分は1/2なので遺留分侵害額請求割合は1/4
- 子 :遺留分は1/2・法定相続分は1/2なので遺留分侵害額請求割合は1/4×1/子の数
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 配偶者
- 子
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 配偶者:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/2=250万円
- 子:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/2×子の数等分1/2=各125万円(子で等分するので、子が2人なら各125万円、3人なら各83万円となる)
なお、被相続人(上記の例だと父)に兄弟・姉妹がいた場合、兄弟・姉妹は法定相続人ではありませんし、兄弟・姉妹は遺留分の対象ではありませんので、兄弟・姉妹分の遺留分は0となります。
パターン⑦:「子のみ」の遺留分と法定相続分
遺留分
法定相続分
法定相続人が「子のみ」の場合、
- 子:遺留分は1/2・法定相続分は1/1なので遺留分侵害額請求割合は1/2×1/子の数
【前提条件】
- 財産(プラスの遺産-債務)が1000万円
- 遺言で第三者へ遺贈する(相続させる)となっている
【遺留分侵害額請求で請求できる法定相続人】
- 子
【遺留分侵害額請求で請求できる遺留分】
- 子:財産1000万円×遺留分1/2×法定相続分1/2×子の数等分1/子の数=500万円(子で等分するので、子が2人なら各250万円、3人なら各166万円となる)
遺留分侵害額請求の手続き5ステップ
- Step1遺留分侵害請求を内容証明郵便(配達証明)で送付します。
- Step2相続人同士で協議します
- Step3協議無効となった場合
特に遺留分が欲しい理由が無ければ「遺留分を放棄(特に何もしない)」します。
どうしても遺留分が欲しい場合「家庭裁判所」にて調停を行います。
- Step4調停
調停とは、家庭裁判所の調停委員(第三者)が間に入って遺留分の協議を行うことです。
遺留分侵害額の請求調停の申立書は、裁判所のHPに掲載されています。
- Step5訴訟
調停でも折り合いがつかない場合、最終的には訴訟という形になります。
離婚して離縁していて住所がわからない場合
戸籍の附票を取得します。
「本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)」なら「本人確認書類」があれば取得できます。
遺留分侵害額請求の書式(ひな形)ダウンロード
遺留分侵害額請求に、法的な書式はありません。
したがって、自分で作成するか、弁護士等へ依頼して作成する必要があります。
もし自分で作成して、相続人へ郵送(配達証明)する場合には、下記ボタンから書式(ひな形)例をダウンロードして作成してください。
遺留分侵害額請求の書式(ひな形)の文例
上記書式をダウンロードすると次のような文例になっています。
太文字の部分と「〇」の部分をご自分のケースに合わせて作成してください。
遺留分侵害額請求 通知書
冠省、被相続人[被相続人名]の相続につき、ご通知差し上げます。
被相続人は、令和〇年〇月〇日付け
【公正証書遺言の場合】
〇〇法務局所属公証人〇〇〇〇作成同年第〇〇〇号遺言公正証書により、
【自筆証書遺言(自筆証書遺言保管制度利用)の場合】
〇〇法務局 保管番号「H0101-202007-100」の遺言書により、
被相続人[被相続人名]が有する不動産、預貯金等、全ての財産を貴殿に相続させる旨の遺言をなし、令和〇年〇月〇日亡くなりました。
しかし、被相続人には、相続人として妻である貴殿のほか「[相続人名A]」及び「[相続人名B]」がいますので、前記遺言書によって、次のとおり遺留分を侵害しております。
【遺留分侵害内容】
一 「[相続人名A:被相続人の子(長男)]」:遺留分4分の1
二 「[相続人名B:被相続人の子(二男)]」:遺留分4分の1
したがって、私は貴殿に対し、本書面をもって遺留分侵害額金◯◯◯万円の支払いを請求いたします。
本書面到達後◯週間以内に、下記口座宛て振込む方法にてお支払いください。
記
◯◯銀行◯◯支店 普通預金 口座番号:◯◯◯◯◯ 名義人:[相続人名A]
以上
令和◯年◯月◯日
住所:東京都千代田区霞が関1-1-1
被通知人:[相続人名] 殿
住所:栃木県宇都宮市〇〇町1-2-3
通知人:[相続人名A] ㊞
住所:栃木県宇都宮市〇〇町1-2-3
通知人:[相続人名B] ㊞
【遺留分侵害額請求】遺留分と法定相続分を解説!【書式ダウンロード可】 まとめ
遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)は、「遺留分」取得の権利をもつ「兄弟・姉妹以外の相続人」が、遺言書などで遺産を相続した人(受贈者)に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することです。
「遺留分侵害額請求」を行うには時効があり、「亡くなったことを知った日または遺贈や遺贈があったことを知ったから1年」と「亡くなった日から10年」のいずれかです。
ただし、遺留分侵害額請求を内容証明郵便(配達証明)で請求すれば時効は中断します。
「遺留分」と「法定相続分」の割合の関係は次の表のとおりで、
遺留分侵害額請求額=「遺留分」-「遺贈された分」
となります。
もし、離婚して離縁していて住所がわからない場合、「本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)」であれば、戸籍の附票を取得することで分かります。
遺留分侵害額請求の書式は、法的な書式はありませんので、下記リンクから書式をダウンロードして自分で作成するか、弁護士等へ依頼して作成します。
以上、ご参考になれば幸いです。
もし、「遺留分侵害額請求」をはじめとする相続や遺言書でお困りの場合、専門家へ無料で相談できるサービスがありますので、ご利用してみてはいかがでしょうか?
相続が複雑で分からない方は専門家へ無料相談しよう!
ぬくぬくのように誰に相談していいかわからない!と思ってしまったら、相続サポートなどの専門家へ必ず相談しましょう。
ちなみにぬくぬくは、司法書士に、登記申請書の確認をしてもらいました。
その後、自分で相続登記をオンライン申請したため、費用は発生しませんでした。
相続に関する記事は「相続手続きまとめ」にまとめていますので、是非ご覧ください。
以上、ご参考になれば幸いです。