所有者不明土地とは「登記簿等を調査して、所有者が判明しない・連絡が付かない土地のこと」です。
通常、土地の所有者情報は、法務局管理の「登記簿」に記録されていますが、2016年に国土交通省が1130地区・558市区町村で「地籍調査」を実施しました。
地籍調査の結果、所有者不明の土地面積が約410万haに相当することがわかりました。
この410万ヘクタールは「41,000km2」に換算されます。
九州の土地面積が36,800km2ですので、九州がまるっとひとつ分の土地の所有者が不明になっています。
そこで国が「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」を設立し、検討が進んでいく中で登場したのが「相続登記の義務化」です。
この記事では
についてお伝えしていきます。
所有者不明土地増加の対策「相続登記の義務化」はいつから?
相続登記の義務化がいつからになるかは決定していません。(2020.7月時点)
しかし、2020.7/3(金)に行われた「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」の第6回会議で、今後どのような工程(マイルストーン)で進めていくかが決定しました。
いつから相続登記は義務化されるのか
早くて「相続登記の義務化」を明文化した「民法・不動産登記法」の法案提出が2020年(令和2年)中で、施行が2022年(令和4年)中になると思われます。
所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議によると
- 2020年中に「民法・不動産登記法」の案を提出
- 2022年中に「相続登記の義務化」を開始
の予定
そもそも、なぜ所有者不明土地が増えたのか
近く、2022年(令和4年)ころには、相続登記が義務化されることは分かりました。
でも、そもそもなぜ所有者不明の土地が増えてしまったのでしょうか?
所有者不明土地の主な発生の原因
相続が発生しても登記がされないことが直接原因です。
本当にそうなのでしょうか?
一般財団法人 国土計画協会の「所有者不明土地問題研究会」が、全国の土地相続候補者を対象に「相続登記意向に関するアンケート調査」を実施結果を見てみましょう。
アンケート対象は「両親が土地(住宅や農地)を保持している25~69歳の男女1192人」として、
- ①相続し、登記する
- ②相続し、売却する
- ③相続するが、登記しない
- ④相続自体を放棄する
をアンケートして、今後の「相続登記未登記(所有者不明土地化)」の推移を予測した結果、徐々に増加していくことが分かりました。
また、年代別に見ていくと、若い人ほど「登記しない」と回答した割合が増えています。
このまま何も対策せず、少子・高齢化社会を迎えて、亡くなる方が増えていった場合、それに伴って所有者不明土地が増加の一途を辿るのは明らかです。
所有者不明土地が関東甲信越の「50,457km2」に届くのも時間の問題というわけです。
所有者不明土地の地目割合
全国の所有者不明率は「20.3%」にも上っています。
「どうせ、人も住めない山とか林じゃないの?」
と思うかもしれませんが、この20%の内訳は次のとおりです。
地目 | 所有者不明率 |
---|---|
宅地 | 14.0% |
地目 | 所有者不明率 |
---|---|
農地 | 18.5% |
地目 | 所有者不明率 |
---|---|
林地 | 25.7% |
もちろん約半分は山林ですが、宅地や農地も半分所有者が分かっていないのです。
相続登記義務化検討が検討のテーブルに乗せることになった「所有者不明土地が増えた理由」は
- 少子・高齢化により、相続登記の機会が今後増える
- 相続による登記は若い人ほど実施しない
所有者不明土地への対応で「相続登記の義務化」される理由
所有者不明土地の何が問題なのでしょうか?
以下の3点が挙げられます。
- 空き家問題
- 管理不行き届きによる近隣住民への被害
- スパイ防止法の無い日本で外国勢力が日本の資源を狙ってる!?
空き家問題
所有者不明土地への対応で「相続登記の義務化」される理由の1つ目が「空き家問題」です。
高齢者が亡くなった後、空き家となり、相続人等が維持管理を行わない結果、老朽化して建物が倒壊し、近隣住民の建物にも被害にを受けます。風景や景観も損ないます。
その他にも、「ゴロツキの溜まり場」になって治安が悪化したり、ごみの不法投棄が発生します。
迷惑するのは近隣住民です。
管理不行き届きによる被害を与えた場合の損害賠償
所有者不明土地への対応で「相続登記の義務化」される理由の2つ目が「損害賠償」です。
空き家問題で建物が倒壊して、近隣建物へキズを付ける・窓ガラスを割る程度であれば、正直幸運です。
もし、空き家が倒壊し、近隣の建物を倒壊(全損)させた場合や住民を死亡させてしまった場合、その損害賠償の試算を見ると2憶です。
スパイ防止法の無い日本で外国勢力が日本の資源を狙ってる!?
所有者不明土地への対応で「相続登記の義務化」される理由の3つ目が「外資が日本の水資源を狙っている!?」です。
日本は水源がきれいなことで有名ですよね。
日本人としては、水がきれいなのが当たり前ですが、外国ではそうはいきません。したがって、日本の水資源を取得し、自国へ輸入しよう!と考える外資が存在します。
しかし、外資による土地買収で日本は守る手立てがありません。
農地であれば、「農地法」で農業委員会の審査が入るため制限できますが、その他の土地の売買は原則自由です。
森林の場合、「国土利用計画法」により、
- 1ヘクタール以上の売買:契約締結後2週間以内に市町村・都道府県知事への届出が必要
- 1ヘクタール未満の売買:届け出不要
となっていますが、そもそも、都道府県は個人情報保護の観点から開示を避ける傾向にあり、外資か否かの確認が難しいようです。
実際、どのくらいの外資が日本の土地を取得しているのでしょうか?
外国資本による森林買収はどれだけ行われているのか
林野庁が毎年「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」として、2006年から調査を開始しています。
都道府県別の外国資本による森林買収
都道府県 | 森林面積(ha) | 森林面積(㎢) |
---|---|---|
愛知県 | 0.07 | 0.0007㎢ |
岡山県 | 48 | 0.48㎢ |
沖縄県 | 8.7 | 0.087㎢ |
宮城県 | 2 | 0.02㎢ |
群馬県 | 44.1 | 0.441㎢ |
山形県 | 10 | 0.1㎢ |
山梨県 | 1.57 | 0.0157㎢ |
神奈川県 | 11.36 | 0.1136㎢ |
静岡県 | 0.5 | 0.005㎢ |
石川県 | 0.5 | 0.005㎢ |
千葉県 | 0.2 | 0.002㎢ |
長野県 | 12.6 | 0.126㎢ |
栃木県 | 1 | 0.01㎢ |
福岡県 | 4.304 | 0.04304㎢ |
福島県 | 90 | 0.9㎢ |
兵庫県 | 260 | 2.6㎢ |
北海道 | 1606.74 | 16.0674㎢ |
和歌山県 | 2 | 0.02㎢ |
北海道が「1606.74ha」で、東京ドーム342個分の森林が外資に取得されていることになります。
※東京ドームが「約4.7ha」です。
では、どこの国が取得しているのでしょうか。
外国資本別の森林買収割合
譲受人の住所地の国名 | 森林面積(ha) | 森林面積(㎢) |
---|---|---|
アメリカ合衆国 | 353 | 3.53㎢ |
アラブ首長国連邦 | 2 | 0.02㎢ |
インドネシア | 5.06 | 0.0506㎢ |
オーストラリア | 57.57 | 0.5757㎢ |
オーストラリアと日本の共有 | 1 | 0.01㎢ |
カナダ | 23.05 | 0.2305㎢ |
ギリシャ | 7 | 0.07㎢ |
サモアと日本の共有 | 93 | 0.93㎢ |
シンガポール | 181.32 | 1.8132㎢ |
シンガポールと日本の共有 | 0.5 | 0.005㎢ |
スイス | 2 | 0.02㎢ |
セーシェル | 5 | 0.05㎢ |
タイ | 19.63 | 0.1963㎢ |
ドイツ | 0.1 | 0.001㎢ |
ニュージーランド | 50 | 0.5㎢ |
フィリピン | 1.25 | 0.0125㎢ |
マレーシア | 3.2 | 0.032㎢ |
英国 | 1.96 | 0.0196㎢ |
英領ヴァージン諸島 | 483.86 | 4.8386㎢ |
英領ヴァージン諸島、アメリカ合衆国(共有) | 0.3 | 0.003㎢ |
英領ケイマン諸島 | 5 | 0.05㎢ |
韓国 | 1.3 | 0.013㎢ |
台湾 | 4.04 | 0.0404㎢ |
中国 | 23.184 | 0.23184㎢ |
中国(マカオ) | 1 | 0.01㎢ |
中国(香港) | 752.02 | 7.5202㎢ |
中国(香港)と中国の共有 | 3 | 0.03㎢ |
中国(香港)と日本の共有 | 9 | 0.09㎢ |
中国(台湾) | 14.3 | 0.143㎢ |
全体が2103.644haで、うち中国が802.504haで、約40%を占めます。
東京ドーム約170個分が中国資本の森林になっています。
その中でも、先日「国家安全法」が成立した香港が、群を抜いて取得しています。
水資源が危険なだけでなく、将来、北海道自体が香港と同様の危険にさらされる可能性も見過ごせないところです。
これら3つが、相続登記を義務化する理由です。
- 空き家問題
- 管理不行き届きによる近隣住民への被害
- スパイ防止法の無い日本で外国勢力が日本の資源を狙ってる!?
相続登記の義務化と併せて検討されていること
所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議では、相続登記の他にも「所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組み」が5つ検討されています。
❶不動産登記情報の更新を図る方策として
- 相続登記や住所変更等の登記の申請を土地所有者に義務付ける
- 申請者の負担軽減を効果的に図る
❷所有者不明土地の発生を予防するための仕組みとして
- 遺産分割されずに長期間経過した場合に
・遺産を合理的に分割できる方策
・土地所有権の放棄を可能とする方策(放棄の要件や認定・費用負担のあり方等)
❸民法の共有制度を見直すことで
- 共有関係にある所有者不明土地について
金銭供託等を利用して共有関係を解消する方策
❹不在者財産管理制度等を見直すことで
- 所有者不明土地に特化した合理的な管理を可能とする方策
❺相隣関係に関する規定を見直すことで
- ライフライン設置等のために所有者不明の隣地でも同意不要で円滑に使用可能とする方策
きちんと登記しておかないと勝手に自分の土地が使われる!?
既に「所有者不明土地の同意不要で使用可能にする」は、2019.6月施行の「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(通称:所有者不明土地法)」で実現されています。
また、既に大分県などの県では「所有者不明土地の活用に係るモデル事業者の募集」として、モデル的な提案取り組みの募集をしていました。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 (通称:所有者不明土地法)とは?
「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(通称:所有者不明土地法)とは、所有者不明土地を利用して地域のための事業を行うことを可能とする「地域福利増進事業」を創設できる法律で、創設は、民間企業やNPO、自治会・町内会など、誰でも行うことが可能です。
地域福利増進事業とは?
所有者不明土地を利用して、地域住民等の福祉や利便の増進のための施設を整備することができる制度です。
具体的に整備できる施設は次のとおり。
- 公園、緑地、広場、運動場
- 道路、駐車場
- 学校、公民館、図書館
- 社会福祉施設、病院、診療所
- 被災者の住宅のための住宅
- 勾配施設、教育文化施設(周辺で同種の施設が著しく不足している場合に限り)
所有者不明土地であって、一定規模以上の建築物が無く、使われていない土地で行うことができます。
土地使用権の取得について都道府県知事の裁定を受けることで、
最長10年間、所有者不明土地を利用できる。
関係者が同意すれば、試用期間の延長も可能になっています。
ここで注目すべきは「地域複利増進事業」のパンフレットにあるQAです。
知らぬ間に自分の土地が使われる可能性は?
・公告・縦覧に際し、土地所有者のうち、所在が判明しているものに通知する
国土交通省「地域福利増進事業パンフレット」より
・登記簿を適切な状態にしている限り、勝手に土地が使われることはない
きちんと登記しておかないと、所有者名義が誰のものかわからない土地が、事実上、自分が使っているのに、使われることになりかねません。
もし、数次相続が発生しているのに登記していないことが明らかな場合は、早めに専門家へ相談して、きちんと登記しておきましょう。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 (通称:所有者不明土地法)「地域福利増進事業」で
- 所有者不明土地が使われる
- 登記をしておかないと「地域福利増進事業」で使われてしまうかも!
- 登記を放置していて、数次相続が発生しているのに登記していないことが明らかな場合は、早めに専門家へ相談!
もし、まだ相続登記をしていない場合、自分でオンラインで相続登記できますので「自分で相続登記手続きを行う方法のまとめ」を参考に登記してみてください。
所有者不明土地増加の対策「相続登記の義務化」はいつから? まとめ
いかがでしたでしょうか?
所有者不明土地の増加に伴う対応のひとつである「相続登記の義務化」の背景についてお判りいただけたのではないでしょうか。
かんたんにまとめます。
所有者不明土地とは「登記簿等を調査して、所有者が判明しない・連絡が付かない土地のこと」
2016年に国土交通省が実施した地籍調査の結果、所有者不明の土地面積が約410万haもあり、「九州の土地面積が36,800km2」「東京ドーム872個分」も所有者不明になっている。
国が「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」を設立して、「相続登記の義務化」が検討されている。
- 2020年中に「民法・不動産登記法」の案を提出
- 2022年中に「相続登記の義務化」を開始
所有者不明土地が増えた理由は
- 少子・高齢化により、相続登記の機会が今後増える
- 相続による登記は若い人ほど実施しない
相続登記を義務化する理由は
- 空き家問題
- 管理不行き届きによる近隣住民への被害
- スパイ防止法の無い日本で外国勢力が日本の資源を着実に取得している
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 (通称:所有者不明土地法)「地域福利増進事業」で
- 所有者不明土地が使われる
- 登記をしておかないと「地域福利増進事業」で使われてしまうかも!
- 登記を放置していて、数次相続が発生しているのに登記していないことが明らかな場合は、早めに専門家へ相談!
「相続登記」にお困りなら専門家へ相談を!
知り合いに誰か相続に明るい人がいれば良いですが、なかなかいないですよね。
私も身内が亡くなったとき、誰に相談していいか全くわかりませんでした。
そこで、私のように誰に相談していいかわからない!という人はプロに無料相談してみてはいかがでしょうか?
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他に「相続」に関わる手続きについての記事は次のとおりです。
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