高額介護合算療養費および高額医療介護合算サービス費は、1年間の医療費と介護費が高額になったときに、年間の自己負担上限額を超えた額を還元してくれる制度です。
- 高額医療介護合算って何?
- 貰える高額医療介護合算費の計算方法は?
こんなお悩みにお答えします。
本記事をご覧の方は、高額介護合算療養費について
という方が多いのではないでしょうか。
本記事では高額介護合算療養費(高額医療・介護合算療養費)をわかりやすく解説します。
ぬくぬくも祖父の介護のときに1度だけ貰ったことがあります
5分くらいで、高額介護合算療養費のポイントについて理解できて、介護と医療の負担を軽減できるかもしれませんのでご一読いただけますと幸いです。
高額介護合算療養費制度とは?
高額介護合算療養費制度とは、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の「医療保険」および「介護保険」の合計額が、標準報酬月額に応じた自己負担限度額を超えた場合、自己負担限度額を超えた額のうち医療分を「高額介護合算療養費」、介護分を「高額医療合算介護(予防)サービス費」として返還してくれる制度のことです。
高額介護合算療養費制度は、「高額療養費・高額介護合算療養費」や「高額医療・高額介護合算療養費制度」、「高額医療・高額介護合算制度」、「介護合算一部負担金等世帯合算額」などとも呼ばれます。
対象者
高額介護合算療養費の対象者は、公的医療保険制度(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療保険など)に加入し、介護保険の受給者が存在する世帯が対象となります。
平たく言えば、介護保険の要介護認定を受けている人が存在する世帯が対象です。
親が要介護で介護施設にいて、あなたは独立している場合は世帯が異なるため、「親の世帯」と「あなたの世帯」で別々に高額介護合算療養費を計算します。
親が要介護かつ後期高齢者医療保険に加入しており、あなたも同居(同一世帯)で健康保険(社会保険)に加入している場合、加入保険が異なるため「親の世帯」と「あなたの世帯」で別々に高額介護合算療養費を計算します。
自己負担限度額(年額)
高額介護合算療養費制度の「自己負担限度額(年額)」は、国民健康保険(国保)なら「標準報酬月額」、健康保険(社保)なら「報酬月額」によって異なります。
- 対象世帯に70~74歳と70歳未満が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に限度額を適用します
- 介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円です
申請方法
高額介護合算療養費を申請するには、該当と思われる世帯に市区町村役場から「高額介護合算療養費支給申請書」が送付されてきます。
ただし、加入している公的医療保険によっては送付されてこないため、保険者窓口に確認しましょう。
高額介護合算療養費支給申請書に添付する書類は次の2つです。
- 住んでいる自治体から介護に関する自己負担の証明書
- 病院などの領収書
証明書は「マイナンバー」を記入できれば添付不要になる保険者もあります。
申請期限
高額介護合算療養費の支給申請の期限は、基準日である7月31日の翌日から2年間です。
もし被保険者が死亡した場合は、死亡日の翌日から2年間です。
対象となる費用9つ
高額介護合算療養費の対象になる費用は9つあります。
かんたんに対象となる費用を見てみましょう。
対象の「介護サービス費」3種類
高額介護合算療養費の対象となる介護サービス費は、「高額介護サービス費」の対象とおなじです。
対象の「医療費」6種類
高額介護合算療養費の対象となる医療費は、「高額療養費」の対象とおなじです。
対象外の費用24つ
高額介護合算療養費の対象にならない費用は24つあります。
かんたんに対象とならない費用を見てみましょう。
対象外の「介護サービス費」11種類
高額介護合算療養費の対象にならない介護サービス費は、「高額介護サービス費」の対象とおなじです。
対象外の「医療費」13種類
高額介護合算療養費の対象にならない医療費は、「高額療養費」の対象とおなじです。
「高額介護合算療養費」と「高額療養費」と「高額介護サービス費」の違いは?
比較 | 高額介護合算療養費 高額医療合算介護サービス費 | 高額療養費 | 高額介護サービス費 |
---|---|---|---|
負担軽減対象 | 介護サービス費+医療費 | 医療費のみ | 介護サービス費のみ |
対象期間 | 1年間 (毎年8月1日~7/31日の期間) | 1か月間 (毎月1日~月末) | 1か月間 (毎月1日~月末) |
支給日 | 申請から概ね2か月後 | 3か月後 | 申請から概ね2か月後 |
支給元保険 | 介護分(高額医療合算介護サービス費):介護保険 医療分(高額介護合算療養費):医療保険 | 医療保険 | 介護保険 |
高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の自己負担の合算額が高額な場合に、さらに負担を軽減する制度のことです。
高額療養費制度は、医療機関の窓口において医療費の自己負担を支払った後、月ごとの自己負担限度額を超える部分について、事後的に医療保険から償還払いされる制度のことです。
高額介護サービス費は、毎月の介護サービス費における1~3割の自己負担額が所得や要介護度に応じた上限額を超えた場合、超えた分が介護保険から支給される制度のことです。
もらえる高額介護合算療養費を計算する方法
もらえる高額介護合算療養費を計算する方法、パターン2つを紹介します。
- パターン1:70歳以上のみの世帯の場合
- パターン2:70歳以上と70歳未満が混在する世帯の場合
パターン1:70歳以上のみの世帯の場合
実際に「70歳以上の夫婦世帯」を、以下の条件を想定して、介護サービス費・医療費を自己負担した場合の高額介護合算療養費を計算してみます。
世帯構成例 | 詳細 |
---|---|
世帯構成 | 夫婦世帯(ともに70歳以上) |
年収 | 270万円 |
加入保険 | 夫:後期高齢者医療保険、介護保険(要介護4) 妻:後期高齢者医療保険 |
夫:毎月の介護サービス自己負担額 | 50,000円 |
妻:3か月間の医療費 | 300,000円 (1か月100,000円) |
ステップ①:自己負担した「介護サービス費」の合計を計算する【A】
自己負担した「1年間(8月1日~7月31日)の介護サービス費」の合計を計算します。
自己負担した介護サービス費の合計=50,000円[夫:介護サービス費自己負担]✖12か月=600,000円 ・・・【A】
ステップ②:自己負担した「医療費」の合計を計算する【B】
自己負担した「1年間(8月1日~7月31日)の医療費」の合計を計算します。
自己負担した医療費の合計=100,000円[妻:医療費]✖3か月=300,000円 ・・・【B】
ステップ③:介護保険から受給した「高額介護サービス費」の合計を計算する【C】
介護保険から受給した高額介護サービス費(高額介護サービス・介護予防サービス費の支給通知書に記載されている額)の合計額を計算します。
高額介護サービス費の合計=(50,000円[自己負担額]ー44,400円[自己負担限度額])×12か月=67,200円 ・・・【C】
ステップ④:医療保険から受給した「高額療養費」の合計を計算する【D】
医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療保険)から受給した高額療養費(高額療養費支給通知書に記載されている額)の合計額を計算します。
高額療養費の合計=(100,000円[自己負担額]ー57,600円[自己負担限度額])×3か月=127,200円 ・・・【D】
ステップ⑤:高額介護合算療養費を計算する
ステップ①~④で算出した【A】~【D】を使って、高額介護合算療養費を計算します。
高額介護合算療養費=600,000円+300,000円ー67,200円ー127,000円)ー560,000[高額介護合算療養費制度における自己負担上限額]=145,800円
※高額介護合算療養費=【A】+【B】-【C】-【D】ー560,000[高額介護合算療養費制度における自己負担上限額]
パターン2:70歳以上と70歳未満が混在する世帯の場合
世帯構成例 | 詳細 |
---|---|
世帯構成 | 夫婦世帯(ともに70歳以上) 子(70歳未満) |
年収 | 700万円 |
加入保険 | 子:健康保険(扶養者) 夫:健康保険(被扶養者)、介護保険(要介護4) 妻:健康保険(被扶養者) |
夫:毎月の介護サービス費 | 50,000円 (毎月の介護サービス自己負担額) |
妻:1年間の医療費 | 300,000円 (3か月入院:10万円/月) |
子:1年間の医療費 | 200,000円 (1か月手術入院:20万円) |
実際に「70歳以上の夫婦世帯」と「70歳未満の子」が混在している場合で、介護サービス費・医療費を自己負担した場合の高額介護合算療養費の計算例を見てみましょう。
ステップ①:70歳以上の人が自己負担した「介護サービス費」の合計を計算する【A】
70歳以上の人が自己負担した「1年間(8月1日~7月31日)の介護サービス費」の合計を計算します。
自己負担した介護サービス費の合計=50,000円[夫:介護サービス費自己負担]✖12か月=600,000円 ・・・【A】
ステップ②:70歳以上の人が自己負担した「医療費」の合計を計算する【B】
70歳以上の人が自己負担した「1年間(8月1日~7月31日)の医療費」の合計を計算します。
自己負担した医療費の合計=100,000円[妻:医療費]✖3か月=300,000円 ・・・【B】
ステップ③:介護保険から受給した「高額介護サービス費」の合計を計算する【C】
介護保険から受給した高額介護サービス費(高額介護サービス・介護予防サービス費の支給通知書に記載されている額)の合計額を計算します。
高額介護サービス費の合計=(50,000円[自己負担額]ー44,400円[自己負担限度額])×12か月=67,200円 ・・・【C】
ステップ④:70歳以上の人が医療保険から受給した「高額療養費」の合計を計算する【D】
70歳以上の人が医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療保険)から受給した高額療養費(高額療養費支給通知書に記載されている額)の合計額を計算します。
高額療養費の合計=100,000円[自己負担額]ー{(80,100+(100,000円[自己負担額]/0.3(3割負担)-267,000)×1%}[自己負担限度額])×3か月= 57,710円 ・・・【D】
ステップ⑤:70歳以上の人の高額介護合算療養費を計算する【E】
ステップ①~④で算出した【A】~【D】を使って、70歳以上の高額介護合算療養費を計算します。
高額介護合算療養費=600,000円+300,000円ー67,200円ー57,710円)ー670,000[高額介護合算療養費制度における自己負担上限額]=105,090円 ・・・【E】
※高額介護合算療養費=【A】+【B】-【C】-【D】-670,000[高額介護合算療養費制度における自己負担上限額]
ステップ⑥:70歳未満の人が自己負担した「医療費」の合計を計算する【F】
70歳未満の人が自己負担した「1年間(8月1日~7月31日)の医療費」の合計を計算します。
自己負担した医療費の合計=200,000円[子:医療費] ・・・【F】
ステップ⑦:70歳未満の人が医療保険から受給した「高額療養費」の合計を計算する【G】
70歳未満の人が医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療保険)から受給した高額療養費(高額療養費支給通知書に記載されている額)の合計額を計算します。
高額療養費の合計=200,000円[自己負担額]ー{(80,100+(200,000円[自己負担額]/0.3(3割負担)-267,000)×1%}[自己負担限度額])×1か月= 115,903円 ・・・【G】
ステップ⑧:世帯の高額介護合算療養費を計算する
ステップ⑤~⑦で算出した【E】【F】【G】を使って、世帯に支給される高額介護合算療養費を計算します。
世帯の高額介護合算療養費=670,000円+200,000円ー115,903円=754,097円
※世帯の高額介護合算療養費=70歳以上の自己負担限度額(=70歳以上が自己負担した額)+【F】ー【G】
高額介護合算療養費の注意すべき5つの点
高額介護合算療養費制度の「自己負担限度額(年額)」を計算するときに注意すべき点が5点あります。
注意点①:「別世帯」および「加入が異なる健康保険」は合算できない
高額介護合算療養費は、世帯が別の場合、医療費および介護サービス費の自己負担額を合算できません。
また、親が後期高齢者医療保険で、子が健康保険であるなど、加入している健康保険が異なる場合、医療費および介護サービス費の自己負担額を合算できません。
注意点②:「介護保険」「医療保険」の自己負担額が0円は支給の対象外
高額介護合算療養費は、医療保険・介護保険の自己負担額のいずれかが0円である場合、支給されません。
また、入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。
注意点③:自己負担額が500円未満の場合は支給の対象外
高額介護合算療養費制度の「自己負担限度額(年額)」一覧表における自己負担限度額を超えた額が500円未満の場合は支給されません。
注意点④:受給した「高額療養費」を差し引いて計算
高額介護合算療養費は、受給した高額療養費および市区町村からの医療費助成を差し引いた額で計算します。
注意点⑤:受給した「高額介護サービス費」を差し引いて計算
高額介護合算療養費は、受給した高額介護サービス費・高額介護予防サービス費を差し引いた額で計算します。
高額介護合算療養費の該当かも?と思ったら市区町村役場へ確認しましょう!
いかがでしたでしょうか?
高額介護合算療養費は、同一世帯・同一加入保険の世帯の医療費および介護費の負担を軽減してくれる制度なので、忘れずに申請して家計負担を軽くしましょう!
高額療養費制度については「『高額療養費制度』とは?年収別の自己負担限度額をわかりやすく解説!」をご覧ください。
高額介護サービス費については「介護保険の『高額介護サービス費』とは?わかりやすく言うと高額療養費制度の介護版!」をご覧ください。
介護に関する記事一覧は、以下のリンクにまとめていますので、是非ご覧ください。
介護に関する記事一覧
以上、ご参考になれば幸いです。