あなたのご両親は離婚していますか?
私の両親は離婚しており、実母に育てられました。
実父は既に別の配偶者と結婚し、子供を成し、別の家庭を築いています。
そんなある日、祖父の相続手続きをしていて、ふと思ったのです。

離婚で離縁し現在は疎遠である実父が亡くなったら、私は法定相続人になるのでは!?

ご推察のとおりです。
両親が離婚していても、
あなたは血縁関係(またはそれに準ずる)関係であるため、
「法定相続人」となります。

な、なんだってーーーーー!!!!!?????
(また、この面倒くさい相続手続きしないといけないの!?)

そのとおりです。
遺言書を残していない限り、あなたは何らかの手続きに巻き込まれます。

えー…やだー…。
あれ?逆に私が死んだ場合は!?

良くお気づきで!
あなたに配偶者と子がいない限り、あなたの遺産は離婚して疎遠でも実母および実父が法定相続人になります。
したがって、あなたが何も対策していない場合、あなたの遺産は渡したくもない実母または実父に奪われる可能性があります!

はぁ!?ふざけんな!
とまぁ茶番はここまでにして、もし、私と同じ立場であるあなたのために、
「離婚で離縁した実母・実父が亡くなった」
またはその逆で
「離婚で離縁した実子が亡くなった」
このように、もし、あなたが「実子または養子縁組した子供の立場」だとしたら、どのような対応方法があるのでしょうか?

どうせ疎遠だし、お葬式だけ顔を出せばいいや
や、虐待を受けていた人や家族へのDVを間近で見ていた人は

あんな人のことなど知らない!
など、悲喜こもごも、思うことがあるでしょう。
しかし、離婚で離縁した実母・実父と全く関係性を断っていたとしても、実母・実父が亡くなった場合は相続手続きに巻き込まれます。
逆に、あなたが亡くなった場合、事前に手を打っておかなければ、実母・実父はあなたの財産を取得することができます。

「納得いかない!」と思う人もいるのでは?
そんなあなたのために、ここでは
について、お伝えしますので、もし親が離婚しているなら本記事を読んで今すぐ対策をすることで、実母・実父が亡くなったときの対応と遺産を渡したくない親に取られない対応をしましょう!
離婚で疎遠になった「実父・実母」の相続に今すぐ備えよ!!
離婚で疎遠になった実父・実母の相続は、どのように備えたら良いのでしょうか?
「動く」と言っても何をどうするべきなのかわかりませんよね。
どういった対応をすべきか、フローチャートで見ていきましょう。
離婚で離縁した実母・実父が亡くなった場合の相続への対応4パターン
あなたの実母・実父が離婚し、疎遠にしており、実母・実父が亡くなった場合の相続の対応は4パターンです。
①実母・実父の財産などいらない(遺言書あり)なら、特にやること無し!
- 実母・実父の財産はいらない
- 遺言書であなた以外の法定相続人に相続させることを明記している
特に何もやることなし
「亡くなった実母・実父の財産はいらない」かつ「遺言書がある」場合は、遺言書に記載されている遺言執行者が、あなた抜きで相続手続きを進めることができるため、特にやることはありません。
こうなっていれば楽ですね。
②実母・実父の財産などいらない(遺言書が無い)なら「相続放棄」か「限定承認」を行う
- 実母・実父の財産はいらない
- 遺言書が無い
相続放棄
または
限定承認
が必要
「亡くなった実母・実父の財産はいらない」のに「遺言書が無い」場合、実子(あなた)は法定相続人になるため、あなた抜きで相続手続きを進められません。
あなたは家庭裁判所へ行って「相続放棄」または「限定承認」のどちらかが必要になります。
どちらを選べば良いのかは
- 負債が多額であるなら「相続放棄」一択です。
- プラスの財産が多いか、借金などの負債が多いかわからない場合「限定承認」です。
遺産相続で、法定相続人が相続しなければならないのは、プラスの財産だけでなく、借金などの「負債」も相続しなければなりません。
しかし、プラスの財産が多いか、借金などの負債が多いかわからない場合もありますよね?その場合は、プラスの財産で負債を差し引いた分だけを相続できる「限定承認」という方法もあります。
※相続放棄については「【死亡後の対応】3か月以内に行う手続き(相続放棄の手続きと必要書類)」で詳しく説明してます。
③実母・実父の財産を貰いたい(遺言書あり)なら「遺留分侵害額請求」を行う
- 実母・実父の財産はもらいたい
- 遺言書であなた以外の法定相続人に相続させることを明記している
遺留分侵害額請求を行う
「亡くなった実母・実父の財産をもらいたい」かつ「あなた以外に財産を相続させる遺言書がある」場合は、遺言書に記載されている遺言執行者が、あなた抜きで相続手続きを進めることができるため、あなたは法定相続分の財産を取得できません。
それでも
- 「もらえるものがあるならもらいたい」
- 「本来、養育費・教育費として必要になった負担を請求したい!」
とお考えの場合
あなたが相続人に対して「遺留分侵害額請求」を行うことで、「遺留分」として、後述する一定の割合の金額を取得できます。
※遺留分侵害額請求と法定相続分については「【遺留分侵害額請求】遺留分と法定相続分を解説!【書式ダウンロード可】」で詳しく説明しています。
具体的には、実子(あなた)は、法定相続分である「財産の1/2(子の数でさらに等分する)」を取得できます。
しかし、遺言書等でその相続分を侵害されている場合は、「法定相続分1/2(子の数で等分)×1/2(遺留分)」を相続人に請求できます。
④実母・実父の財産を貰いたい(遺言書無し)なら「遺産分割協議書」で相続する
- 実母・実父の財産はもらいたい
- 遺言書が無い
遺産分割協議書
で
相続手続き
が必要
「亡くなった実母・実父の財産はもらいたい」のに「遺言書が無い」場合、実子(あなた)は法定相続人になるため、あなた抜きで相続手続きを進められません。
遺言書がないと、不動産や預貯金の相続手続きを行うために「遺産分割協議書」が必要になります。
どういった遺産配分を行うかを法定相続人で協議して作成するのが「遺産分割協議書」ですので、元配偶者との子(あなた)と、現配偶者やその子と協議することになります。
「遺産分割協議書」の協議が難航するは火を見るよりも明らかですよね。
したがって、実子(あなた)が「本来、養育費・教育費として必要だった負担分を請求したい!」など、強い思いをお持ちでなければおススメしません。
とは言え、遺言書を残して亡くなるケースはそう多くないでしょう。
もし再婚していて、再婚先の家族と必要以上にもめたくなければ
「判子代として〇円お渡ししますので、遺産分割協議書に押印と印鑑証明書を頂けないでしょうか。手続きはこちらでしますので。」
と相談があったら、素直に済ませてしまった方が、あなたにとって精神衛生上良いかもしれません。
離婚で疎遠になった「実子(あなた)」の相続に今すぐ備えよ!!
一方、もし実子(ここではあなた)が亡くなってしまい、あなたの相続が発生した場合、離婚で疎遠になった実父・実母が法定相続人になる可能性があります。
どのように対応が備えたら良いのでしょうか?
どういった対応をすべきか、フローチャートで見ていきましょう。
離婚で疎遠になった実子(あなた)が亡くなった場合の相続への対応3パターン
あなたの実母・実父が離婚し、疎遠にしており、万が一実子(あなた)が亡くなった場合の相続の対応は3パターンです。
①実母・実父・兄弟姉妹に実子(あなた)の財産を渡したくないなら「遺言書作成」+「10年時効を待て」!
- 実子(あなた)に配偶者と子がいない
- 離婚して疎遠な実母・実父・兄弟姉妹に財産を渡したくない!
- 財産は全て「引き取って育ててくれた実母または実父」や「育ての親」に相続させたい
遺言書を作成
かつ
10年死亡した旨を連絡しない
実子(あなた)に「配偶者と子がいない」かつ「遺言書が無い」場合は、実母・実父・兄弟姉妹が法定相続人になります。
具体的には次の画像のようなケースです。
万が一の場合、実子(あなた)の財産は「育ての親」に渡したいとも思うのが一般的かと思います。
したがって、実子(あなた)が思う相手に財産を相続させたい場合「遺言書」を作成し、遺言執行者に相続させたい人を指定します。
ただし、遺言書を残すだけでは足りません。
例え遺言書があっても、法定相続人である実母・実父・兄弟姉妹には「遺留分侵害額請求」を行う権利があり、あなたの財産の一部を相続する権利があります。
次の画像ように、離婚して離縁した実父が、実子(あなた)の財産の1/6を遺留分として相続できます。
※遺留分侵害額請求と法定相続分については「【遺留分侵害額請求】遺留分と法定相続分を解説!【書式ダウンロード可】」で詳しく説明しています。
「遺留分侵害額請求」の時効は、
- 実子(あなた)が亡くなってから10年
- 法定相続人が実子(あなた)の死亡を知ってから1年
ですので、法定相続人である実母・実父・兄弟姉妹へ10年間連絡しない または 「遺留分侵害額請求」を1年間知られない必要があります。
したがって、エンディングノート等で、財産を相続させたい相手に「自分の死について、10年間伝えない」旨を明らかにしておく必要があります。
②あなたに配偶者と子がいるなら、特にやること無し!
- 実子(あなた)に配偶者と子がいる
特に何もやることなし
実子(あなた)に「配偶者と子がいる」場合は、法定相続人は「配偶者」と「子」になるので、特にやることはありません。
こうなっていれば楽ですね。
③実母・実父・兄弟姉妹に財産を渡しても良いなら、特にやること無し!
- 実子(あなた)に配偶者と子がいない
- 遺言書が無い
- 離婚して疎遠な実母・実父・兄弟姉妹に財産を渡してもかまわない
特に何もやることなし
実子(あなた)に「配偶者と子がいない」かつ「遺言書が無い」場合は、実母・実父・兄弟姉妹が法定相続人になります。
※法定相続人については「【遺留分侵害額請求】遺留分と法定相続分を解説!【書式ダウンロード可】」で詳しく説明しています。
なぜ離婚で疎遠な実母・実父の相続に巻き込まれたり、あなたの財産を取られるの?
なぜ離婚で疎遠で、今や全く関係性のない実母・実父の相続に巻き込まれたり、実子(あなた)に不幸があったときに財産を取られなければならないのでしょうか?
理由は次のとおりです。
まず、大前提として法定相続人は、血縁関係(またそれに準ずる)関係で決定します。
法定相続人には、遺言書がなければ、遺産(財産や負債)を「法定相続分」として受け取る権利があります。
- あなたが離婚して疎遠な実母・実父の「実子」または養子縁組して「実子と同等」である場合、あなたは法定相続人となります。
- 実母・実父の婚姻関係の有無を問わず、「親子」であり、生涯その関係性に変わりはありませんので、法定相続人になります。
あなたが亡くなって、あなたに配偶者または子がいない場合、離婚で離縁した実母・実父は法定相続人になります。
なお、実母・実父が離婚するとふたりの間に血縁はありませんので、片方が亡くなっても、元配偶者には相続権はありません。
子は夫婦の架け橋とは良く言ったものですね。
事前に相続放棄をしておくことはできないの?
調べる間もなく債務過多であることが明白である場合、「時間があるうちに相続放棄しておきたい」と考えますよね。
残念ながら事前に相続放棄できません。
相続放棄するには、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申し出を行う必要があり、申請には「被相続人の出生から死亡までの戸籍」が必要になります。
したがって、相続放棄は相続が開始してからでなければ手続きできません。
「実母」「実父」「継母」「継父」「実子」「養子」「摘出子」「非摘出子」と本記事における読み替えの関係
本記事では「実母・実父・実子」で統一して表記していますが、親子関係には養子の他にも関係性があります。
次の一覧表を参考に、本記事では次のとおり読み替えられます。
本記事での表記 | 読み替え 可能 | 読み替え 不可 |
---|---|---|
実母・実父 | 継母・継父 (養母・養父) ※普通および特別養子縁組をした親 | 特別養子縁組で親子関係を切られた親 養子縁組していない後妻/後夫 |
実子 | 養子 摘出子・非摘出子 認知した内縁の妻の子 | 養子縁組していない後妻/後夫の子 (後妻/後夫の連れ子) |
配偶者 | – | 内縁の妻 |
本記事では「実母」・「実父」と書いていますが養子縁組をしている「継母・継父」(血のつながりのない親)も実母・実父と同等の扱いになります。
逆に、俗に言う「連れ子」(前妻の子、前夫の子)についても同様で、養子縁組をしていれば、「実子」と同等の扱いになりますので、読み替えることができます。「摘出子」「非摘出子」なのかも関係ありませんので「実子」と読み替えることができます。
実母・実父が第三者と再婚していても、再婚相手とあなたが養子縁組しているなら、あなたは「実子」と同等の扱いになりますので、実母・実父の相続と、養子縁組で継母・継父の相続に関連することになります。
継母・継父と養子縁組をしていない場合、「実子と同等扱いにはなりません」ので相続権はありません。
養子縁組には「特別養子縁組」というものがあり、これは今の母・父との関係を断ったうえで新たな継母・継父と養子縁組するものですので、関係を断った親子間では法定相続人になりません。
通常配偶者には相続権がありますが、内縁の妻には婚姻関係がありませんので、相続権はありません。
離婚で疎遠になった実父・実母または実子の相続に今すぐ備えよ!! まとめ
いかがでしたでしょうか。まとめると次のとおりです。
養子縁組をした継母・継父(養母・養父)は、実母・実父と同様の法的扱いとなるため、法定相続人となります。
養子・摘出子・非摘出子・認知した内縁の妻の子は、実子と同様の法的扱いとなるため、法定相続人となります。
「法定相続人」が誰になるのかや「遺留分」「法定相続分」の割合については「【遺留分侵害額請求】遺留分と法定相続分を解説!【書式ダウンロード可】」で基本的な考え方を図解していますのでご一読ください。
【ご参考】離婚で疎遠になった実父の相続を私はどう考えているか?
私は父とは疎遠で、もう20年は会っていませんし、正直思い入れはありません。
しかし、父がその後、どういった資産形成をしてきたのかは正直興味があります。
一方、既に形成されている家庭を壊すつもりは毛頭ありません。
したがって、亡くなった旨の連絡が来れば、相続手続きに関してお手伝いするのもやぶさかではありません。
多額の財産を残しているなら、本来負担するはずだった教育費分をためらいなく法定相続分の相続をしますし、遺言書が残されていて遺留分を侵害されているようであれば、遺留分侵害額請求も行います。
【ご参考】もし私が死んでしまったときにどう備えるか?
私個人は未婚ですし、子もいません。(予定もありません)
私には兄弟がおり、甥っ子もいます。
父に対してびた一文たりとも、私の財産を相続させたくありません。
したがって、「自筆証書遺言書」を作成し、遺言執行者および相続人を母・弟(予備)とし、エンディングノートに「私の一切の財産を父に譲らないため、遺留分侵害額請求の権利が時効消滅する私の死後10年間は、私の死について父へ通知しないこと」とします。
遺言書については、「自筆証書遺言保管制度」を利用します。(2020.7/10に制度開始)
さらに、自筆証書遺言を法務局で保管し、死後に遺言者が指定する人1名に通知できるサービスが2021年より始まる予定ですので、法務局へ保管申請します。
以上、ご参考になれば幸いです。
- 相続放棄の手続き
- 遺産分割協議書の作成方法
- 遺言書の書き方と法務局での保管
- エンディングノートの書き方とおススメ
については次の記事を是非ご覧ください。
コメント