昨今、経済的に独立した早期退職
FIRE(Financial Independence Retire Early)
を目的とした動きをしている方々が増えました。
私もそのひとりでありますが、具体的なことを考えたことはありませんでした。
この記事では
とお悩みのあなたへ、
について、参考事例をお伝えしていきます。
会社員が受け取る年金の構造
この記事で挙げるのは「会社員」ですので、
よく見かける年金構造3階建ての図で、赤枠で囲った部分のお話をします。

これを端的にまとめると次の一覧のとおりです。
会社員の年金構造
<会社員の年金構造と受取方法一覧>
年金階層 | 年金区分 | 年金種類 | 支払方法 | 受取方法 (年金=雑所得) | 受取方法 (一時金=退職所得) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
その他 | 退職金 | 退職一時金 | - | ー | 退職時。 FIRE(自己都合)は激減 | FIRE(自己都合退職)の場合、 確定給付年金額分が控除される。 定年退職は控除されない。 |
3階部分 | 私的年金 | 財形年金貯蓄 | 給与天引 | 60歳以後 期間指定受取 | 60歳以後 一括受取 | |
3階部分 | 私的年金 | 個人型 確定拠出年金 (iDeCo) | 個人拠出 | 60歳以後 5~20年を 指定して受取 | 60歳以後 一括受取 | ・65歳まで加入可能(2022年度より) ・企業型確定拠出年金加入者 も加入可能になる |
2階部分 | 企業年金 | 企業型 確定拠出年金 (DC) | 給与天引 (マッチング拠出時) | 60歳以後 〇年・年〇回 を指定受取 | 60歳以後 一括受取 | 個人型確定拠出年金 (iDeCo)へ移管可能 |
2階部分 | 企業年金 | 確定給付 企業年金 (DB:企業年金 基金) | 企業拠出 | 60歳以後 5/10/15/20年を 指定して受取 | 60歳以後 (60歳未満は 加入10年以上) | 60歳以上:老齢給付金 5年後から一時金への 切替可能 |
1階部分 | 公的年金 | 厚生年金 | 労使折半 (国民年金分も 社会保険料で徴収) | 60歳~75歳 受取開始 | ー | |
1階部分 | 公的年金 | 国民年金 (基礎年金) | 第二号保険者として 社会保険料に含まれる | 60歳~75歳 受取開始 | ー |
◆年金階層に「退職金」を入れていますが、
この退職金でアーリーリタイアを組み込まないと成り立たない
ので追加しています。
◆受取方法に「年金」「一時金」と書きましたが、
呼び名が色々あってごちゃごちゃするのでざっくり
- 年金 :複数年にわたって受け取るお金 = 雑所得
- 一時金:一括で受け取るお金 = 退職所得/一時所得
と、呼び名は何であれ、所得税の税目で、意味分けした方がわかりやすいです。
◆支払方法は、私たちが、現役世代である現在
- どういった方法で保険料・元金を支払っているか
を示したものです。
55歳でFIRE:アーリーリタイアした場合に受け取る年金や退職金は?
さて、ここからが本題です。
先ほどの年金構造一覧表へ
実際に55歳でFIRE:アーリーリタイアした場合の受取金額を当て込んでいきましょう。
55歳でFIRE:アーリーリタイアした場合の受取金額
<55歳でFIRE:アーリーリタイアした場合の受取金額一覧表>
※個人的に未加入なものは省いてます。
年金階層 | 年金区分 | 年金種類 | 受取時期 | 受取方法 | 受取金額 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
その他 | 退職金 | 退職一時金 | 55歳 | 一時金=退職所得 | 229万円 | FIRE(自己都合退職)の場合、 確定給付年金額分が控除される。 定年退職は控除されない。 |
3階部分 | 私的年金 | 個人型 確定拠出年金 (iDeCo) | 70歳 受取開始 | 60歳で企業型 確定拠出年金を 移管 (緊急予備費) | 620万円 | ・65歳まで加入可能(2022年度より) ・企業型確定拠出年金加入者 も加入可能になる |
2階部分 | 企業年金 | 企業型 確定拠出年金 (DC) | 55歳 移管 | 個人型 確定拠出年金 へ移管 | 500万円 | 個人型確定拠出年金 (iDeCo)へ移管可能 |
2階部分 | 企業年金 | 確定給付 企業年金 (DB:企業年金 基金) | 55歳 | 一時金=退職所得 | 187万円 | JJK(全国情報サービス産業 企業年金基金)の モデル給付額最低値が根拠 |
1階部分 | 公的年金 | 厚生年金 | 70歳 | 年金=雑所得 | 7万円/月 | 65歳受取開始可能ですが、 70歳受取可能に変わることを想定 |
1階部分 | 公的年金 | 国民年金 (基礎年金) | 70歳 | 年金=雑所得 | ー |
「退職一時金」「確定給付企業年金」「厚生年金/国民年金」に注目です。
これに加え、資産運用でどのくらいの運用成果を反映させるかは個人ごとにことなりますが、
私は次の目標値を立てています。
<資産運用目標値>
受取時期 | 受取方法 | 受取金額 | 備考 |
---|---|---|---|
4半期毎 | 配当金 | 12万円/月 | 源泉徴収後額 |
55歳でFIRE:アーリーリタイアしたあとの支出額は?
受取金額(収入)は見えましたが、
55歳以降の支出額はどうなるのでしょうか?
月額ベースの支出を見ていきましょう。
55歳でFIRE:アーリーリタイアしたあと年齢別の支出額
<55歳でFIRE:アーリーリタイアした場合の支出額一覧 ※月額ベース>
年齢 | 支出合計 (月額) | 生活費 | 社会保険料 | 固定資産税 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|---|---|---|
55~59歳 | ¥168,908 | ¥120,000 | ¥28,700 | ¥2,500 | ¥5,625 | ¥12,083 |
60~64歳 | ¥168,908 | ¥120,000 | ¥28,700 | ¥2,500 | ¥5,625 | ¥12,083 |
65~69歳 | ¥165,333 | ¥120,000 | ¥23,125 | ¥2,500 | ¥6,292 | ¥13,417 |
70~79歳 | ¥166,083 | ¥120,000 | ¥23,875 | ¥2,500 | ¥6,292 | ¥13,417 |
80歳~ | ¥240,083 | ¥200,000 | ¥23,125 | ¥2,500 | ¥4,542 | ¥9,917 |
80歳以降は「介護保険施設のサービス利用料」を想定して20万円を計上しています。
これで支出が見えました。それでは収支と不足額を見ていきます。
55歳でFIRE:アーリーリタイアした場合の収支と必要貯蓄額
これまで見てきた収支を当て込んでいくと次のとおりになります。
アーリーリタイアした場合、不足額は一時金を割り振るしかありません。
55歳でアーリーリタイアした場合の一時金の割り振り案
<55歳でアーリーリタイアした場合の一時金の割り振り案 年齢別一覧表>
※金額は全て「月額」
年齢 | 収入合計 | 配当金 | 公的年金 | 退職一時金 +企業年金基金 |
---|---|---|---|---|
55~59歳 | ¥143,000 | ¥120,000 | ¥23,000 | |
60~64歳 | ¥143,000 | ¥120,000 | ¥23,000 | |
65~69歳 | ¥143,000 | ¥120,000 | ¥23,000 | |
70~79歳 | ¥190,000 | ¥120,000 | ¥70,000 | |
80歳~ | ¥190,000 | ¥120,000 | ¥70,000 |
これを年齢別の支出から差し引くと不足分が出せます。
年齢 | 貯蓄切り崩し (マイナスが切り崩し額) | 必要貯蓄額 | インフレ率2% |
---|---|---|---|
55~59歳 | -¥25,908 | ¥1,716,294 | 1.104080803 |
60~64歳 | -¥25,908 | ¥1,894,927 | 1.21899442 |
65~69歳 | -¥22,333 | ¥1,803,464 | 1.345868338 |
70~79歳 | ¥23,917 | - | 1.640605994 |
80歳~ | -¥50,083 | ¥12,019,336 | 1.999889553 |
合計必要貯蓄額 | ¥17,434,020 |
ざっくり2000万円足らなくなりますね。
そもそも今の日本において、インフレ率2%はありえない、と考えていますので
何のトラブルもなく暮らす(これもありえない)ならば
キャッシュは1500万円あれば何とかなりそうです。
逆に言うと、これが見えない場合、事業を起こしたり転職したりして見えるようにしたいところですね。
60歳で定年退職した場合に受け取る年金や退職金は?
さて、一方60歳で定年退職した場合はどうなるのでしょうか?
さすがに優遇されています。
一覧を見ていきましょう。
60歳で定年退職した場合の受取金額
<60歳で定年退職した場合の受取金額一覧表>
年金階層 | 年金区分 | 年金種類 | 受取時期 | 受取方法 | 受取金額 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
その他 | 退職金 | 退職一時金 | 60歳 | 一時金=退職所得 | 1060万円 | 2060万円までなら退職所得控除で所得税/住民税かからない |
3階部分 | 私的年金 | 個人型 確定拠出年金 (iDeCo) | 70歳受取開始 | 60歳で 企業型 確定拠出年金を 移管 (緊急予備費) | 720万円 | ・65歳まで加入可能(2022年度より) ・企業型確定拠出年金加入者も 加入可能になる |
2階部分 | 企業年金 | 企業型 確定拠出年金 (DC) | 60歳 | 個人型 確定拠出年金へ移管 | 560万円 | 個人型確定拠出年金 (iDeCo)へ移管可能 |
2階部分 | 企業年金 | 確定給付 企業年金 (DB:企業 年金基金) | 60歳 | 年金=雑所得 | 267万円 | JJK(全国情報サービス産業 企業年金基金)の モデル給付額最低値が根拠 |
1階部分 | 公的年金 | 厚生年金 | 70歳 | 年金=雑所得 | 8万円/月 | 65歳受取開始可能ですが、 70歳受取可能に変わることを想定 |
1階部分 | 公的年金 | 国民年金 (基礎年金) | 70歳 | 年金=雑所得 | ー | 65歳受取開始可能ですが、 70歳受取可能に変わることを想定 |
「退職一時金」は確定給付企業年金分の控除を受けない額を受け取れるのでアーリーリタイアした場合と比較して、差額が大きいです。
「確定給付企業年金」は100万円程度増えています。
「厚生年金/国民年金」は月額1万円アップ。
60歳で定年退職したあとの支出額は?
60歳で定年退職したあと年齢別の支出額
収入が増えるので「社会保険料」「所得税」「住民税」の金額が上がります。
<60歳で定年退職した場合の支出額一覧 ※月額ベース>
年齢 | 支出合計 | 生活費 | 社会保険料 | 固定資産税 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|---|---|---|
60~64歳 | ¥163,208 | ¥120,000 | ¥28,750 | ¥2,500 | ¥3,708 | ¥8,250 |
65~69歳 | ¥158,708 | ¥120,000 | ¥23,750 | ¥2,500 | ¥3,875 | ¥8,583 |
70~79歳 | ¥165,083 | ¥120,000 | ¥25,000 | ¥2,500 | ¥5,583 | ¥12,000 |
80歳~ | ¥238,708 | ¥200,000 | ¥23,750 | ¥2,500 | ¥3,875 | ¥8,583 |
60歳で定年退職した場合の収支と必要貯蓄額
60歳で定年定食した場合の年金と一時金の割り振り案
<60歳で定年退職した場合の年金と一時金の割り振り案 年齢別一覧表>
年齢 | 収入合計 | 配当金 | 公的年金 | 企業年金基金 (20年年金) | 退職一時金 |
---|---|---|---|---|---|
60~64歳 | ¥175,000 | ¥120,000 | ¥11,000 | ¥44,000 | |
65~69歳 | ¥175,000 | ¥120,000 | ¥11,000 | ¥44,000 | |
70~79歳 | ¥255,000 | ¥120,000 | ¥80,000 | ¥11,000 | ¥44,000 |
80歳~ | ¥200,000 | ¥120,000 | ¥80,000 |
これを年齢別の支出から差し引くと不足分は次のとおり。
年齢 | 貯蓄切り崩し (マイナスが切り崩し額) | 必要貯蓄額 | インフレ率2% |
---|---|---|---|
60~64歳 | ¥11,792 | - | 1.104080803 |
65~69歳 | ¥16,292 | - | 1.21899442 |
70~79歳 | ¥89,917 | - | 1.485947396 |
80歳~ | -¥38,708 | ¥9,289,487 | 1.811361584 |
合計必要貯蓄額 | ¥9,289,487 |
ざっくり1000万円で済みますね。
退職金の爆発力の大きさは意外でした。
55歳リタイアと比較したら半分
です。
老齢給付金(年金)と退職一時金の税金
年金の源泉徴収額
年金は、次の所得税を源泉徴収されて振り込まれます。
源泉徴収税額
=(年金の支払額 -(年金の支払額×25%))×10%×102.1%(※)
=年金の支払額×7.6575%
(※)2013年1月1日~2037年12月31日までの所得については、所得税に2.1%を乗じた復興特別所得税が、所得税にあわせて源泉徴収される。
年金にかかる税金
その年に受け取った年金(公的年金/企業年金/私的年金)については、次のとおり。
雑所得の金額=お受け取りになった年金の収入金額(税引前)- 公的年金等控除額
<公的年金等控除額(a)の速算表>
公的年金等以外の 合計所得金額 | 公的年金等≦1,000万円 | 1,000万円<公的年金等≦2,000万円 | 2,000万円<公的年金等 | |
65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | 50万円 | 40万円 |
65歳未満 | 130万円超~410万円以下 | a×25%+27.5万円 | a×25%+17.5万円 | a×25%+7.5万円 |
65歳未満 | 410万円超~770万円以下 | a×15%+68.5万円 | a×15%+58.5万円 | a×15%+48.5万円 |
65歳未満 | 770万円超1,000万円以下 | a×5%+145.5万円 | a×5%+135.5万円 | a×5%+125.5万円 |
65歳未満 | 1,000万円超 | 195.5万円 | 185.5万円 | 175.5万円 |
65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | 100万円 | 90万円 |
65歳以上 | 330万円超~410万円以下 | a×25%+27.5万円 | a×25%+17.5万円 | a×25%+7.5万円 |
65歳以上 | 410万円超770万円以下 | a×15%+68.5万円 | a×15%+58.5万円 | a×15%+48.5万円 |
65歳以上 | 770万円超1,000万円以下 | a×5%+145.5万円 | a×5%+135.5万円 | a×5%+125.5万円 |
65歳以上 | 1,000万円超 | 195.5万円 | 185.5万円 | 175.5万円 |
退職一時金にかかる税金
所得税
退職一時金は「退職所得」で「退職所得控除」が適用されます。
課税退職所得金額=(その年の退職所得の金額の合計額-退職所得控除額)×1/2
<退職所得控除額計算方法>
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 ※80万円未満の時は、80万円 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
課税退職所得金額をもとに、所得税を計算します。
課税退職所得金額 | 所得税額の計算方法 |
---|---|
195万円以下 | (( 課税退職所得金額 )×5%)×102.1%(※) |
195万円超、330万円以下 | (( 課税退職所得金額 )×10% – 97,500円)×102.1%(※) |
330万円超、695万円以下 | (( 課税退職所得金額 )×20% – 427,500円)×102.1%(※) |
695万円超、900万円以下 | (( 課税退職所得金額 )×23% – 636,000円)×102.1%(※) |
900万円超、1,800万円以下 | (( 課税退職所得金額 )×33% – 1,536,000円)×102.1%(※) |
1,800万円超、4,000万円以下 | (( 課税退職所得金額 )×40% – 2,796,000円)×102.1%(※) |
4,000万円超 | (( 課税退職所得金額 )×45% – 4,796,000円)×102.1%(※) |
(※)2013年1月1日~2037年12月31日までの所得は、所得税に2.1%を乗じた復興特別所得税が、所得税にあわせて源泉徴収される。
住民税
上記所得税を算出した際の課税退職所得金額をもとに、住民税を計算します。
住民税= 課税退職所得金額 ×10%
FIRE:アーリーリタイアと定年退職を比較 まとめ
これまで見てきましたが、金銭的な理由だけでFIRE:アーリーリタイアを目指す場合
「これでもアーリーリタイアを目指しますか!?」
という結果でした。
アーリーリタイアした場合、定年退職と比べて1000万円近くの不利
です。
ただしこれは、
を全く無視した内容です。
あなたの身体や精神が壊れるくらいなら、
一刻も早くアーリーリタイアを画策し
それを励みに仕事に勤しむことで
今の日々の生活にも張り合いが出てくるのではないでしょうか?
私は引き続きFIRE:アーリーリタイアを目指します。