日経新聞社の「介護保険料、4月大幅上げ 大企業、年1万円超の負担増続出 給付の抑制急務に」の記事にあるとおり、2020.4月より介護保険料が大企業を中心に値上げされるようです。
私を始め、老後2000万円問題で投資に着手して投資計画を立てた人は、この介護保険料についての考慮をお忘れではないでしょうか。
ここでは次の3点についてお伝えしていきます。
- 介護保険ってどういう制度?
- 第二号被保険者の介護保険料
- 介護保険料の今後
- 投資計画への影響は?
介護保険ってどういう制度?
まずは介護保険制度の全体像は次のとおりです。
要約すると
財源「50%:国・都道府県・市区町村」「50%:第一号保険料、第二号保険料」
で運用される保険制度で、第一号保険料・第二号保険料は
- 第二号保険料:40歳~64歳までの公的医療保険加入者の保険料
- 第一号保険料:65歳以上の人の保険料
を指します。
介護保険の目的
介護保険の目的は「介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第一条」に規定されています。
介護保険法
第一章 総則
(目的)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=409AC0000000123#2
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
介護保険の対象
介護保険の対象は「 介護保険法(平成九年法律第百二十三号) 第九条 の第一項、第二項」に規定されており
- 第二号被保険者:40歳~64歳までの公的医療保険加入者
- 第一号被保険者:65歳以上の人
となっています。
介護保険法
第二章 被保険者
(被保険者)
第九条 次の各号のいずれかに該当する者は、市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者とする。一 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。)
二 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=409AC0000000123#114
介護保険料徴収の法的根拠
介護保険料徴収の法的根拠は「介護保険法 第百二十九条」に規定されています。
ただし、ここで「はぁ!?」と思う記載があります。
介護保険法
第八章 費用等
第一節 費用の負担
(保険料)
第百二十九条 市町村は、介護保険事業に要する費用(財政安定化基金拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、保険料を徴収しなければならない。
2 前項の保険料は、第一号被保険者に対し、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率により算定された保険料額によって課する。
4 市町村は、第一項の規定にかかわらず、第二号被保険者からは保険料を徴収しない。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=409AC0000000123#2198
第二号被保険者は「保険料を徴収しない」となっています。
では、40歳以上65歳未満の第二号被保険者は介護保険料払わなくてよいのでは!?
残念ながら、違います。
第二号被保険者の介護保険料徴収の法的根拠は!?
第二号被保険者の介護保険料は、法の建てつけが少し煩雑です。
順を追ってみました。
まずは「介護保険法 第九条 第二号」の第二号被保険者の規定。
介護保険法
第二章 被保険者
(被保険者)
第九条 次の各号のいずれかに該当する者は、市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者とする。
二 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=409AC0000000123#114
この「医療保険加入者」については「介護保険法 第七条 第8項」に規定されています。
(定義)
第七条
8 この法律において「医療保険加入者」とは、次に掲げる者をいう。
一 健康保険法の規定による被保険者。ただし、同法第三条第二項の規定による日雇特例被保険者を除く。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=409AC0000000123#33
この「健康保険法」を見ていくと「健康保険法 第百五十六条」にたどり着きます。
(被保険者の保険料額)
第百五十六条 被保険者に関する保険料額は、各月につき、次の各号に掲げる被保険者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 介護保険法第九条第二号に規定する被保険者(以下「介護保険第二号被保険者」という。)である被保険者 一般保険料額(各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ一般保険料率(基本保険料率と特定保険料率とを合算した率をいう。)を乗じて得た額をいう。以下同じ。)と介護保険料額(各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ介護保険料率を乗じて得た額をいう。以下同じ。)との合算額
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=211AC0000000070#1077
第二号被保険者の介護保険料
けんぽの例が多いので、TJK 東京都情報サービス産業健康保険組合 保険料について を例に見ていきましょう。
第二号被保険者の保険料
- 各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ介護保険料率を乗じて得た額
- 労使折半(会社が半分支払う)
令和2年度・令和元年度の介護保険料比較
1か月の給与収入が「350,000円」だった場合を例に挙げます。
No | 年度 | 収入 (報酬月額) | 適用 等級 | 介護保険料 | 年間 介護保険料 | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 令和2年度 | 毎月給与350000 | 25 | 3114 | 37368 | +10.4% |
2 | 令和2年度 | 賞与1000000 | 43 | 8477 | 16954 | +10.4% |
3 | 令和元年度 | 毎月給与350000 | 25 | 2790 | 33480 | 0 |
4 | 令和元年度 | 賞与1000000 | 43 | 7595 | 15190 | 0 |
10%も上がってます。
介護保険料の予測
厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」等についてを見てみると
『 2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省 平成30年5月21日) 』という資料があります。
医療・介護の1人当たり保険料・保険料率の見通し①
年度 | 第二号保険料率 | 増加率 |
---|---|---|
2040年度 | 2.5% | +39.2% |
2025年度 | 1.9% | +20% |
2018年度 | 1.52% | 0 |
現在毎年50000円近く払っている介護保険料が
- 5年後には20%増える
- 20年後には現時点から40%増える
という予測が立てられています。
ざっくり年1%は増えていく計算ですね。
投資計画への影響は?
2040年を見据えた社会保障の将来見通しから算出すると、次の予測になります。
介護保険料 | 2018年度 | 2025年度 | 2040年度 |
---|---|---|---|
月額 | 3200円 | 3840 | 4800 |
賞与 | 8500円 | 10200 | 12750 |
年額 | 55400円 | 66480 | 83100 |
月額で見ると大したことないように見えますが、年額の上昇率を見るとえげつないですね。
これはあくまで月額の給与が350,000円一定だった場合で、
恐らく給与は上がっていくけれど、こういった税金が上がっていって
手取り収入は現状維持または減っていくのでしょう。
今のうちに固定費削減して投資!
とか言いたいですけど、そもそも投資に回せるお金自体が減っていっているのが問題。
もう現役世代は限界です。
参考:第二号被保険者の介護保険料徴収後のお金の流れ
第90回社会保障審議会介護保険部会「資料3 令和2年度介護納付金算定にかかる諸係数について(報告)」に資料があります。
第二号被保険者が納付した介護保険料は次の機関を経て、介護保険サービス等に換価されます。
- 第二号被保険者が介護保険料を協会けんぽ、健保組合、共済組合へ納付
- 社会保険資料報酬支払基金へ納付
- 各市町村へ配布
- 各市町村から介護保険サービスへ換価
これを見てもう一度収支バランスを見直したい方は 手取り収入を4分割すると投資を始められる家計の収支バランスが分かる!マネーセンスカレッジのQGSのススメ をご参考にしてください。